スティーヴ・ローゼンバーグ、BBCニュース(ミンスク)
東欧ベラルーシを1994年以来支配するアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は19日、中東などからの移民がベラルーシのポーランド国境に押し寄せている問題について、ベラルーシ当局が移民の越境を手助けした可能性について「まったくあり得る」と認めた。BBCのスティーヴ・ローゼンバーグ記者による単独取材で述べた。
多くの移民が主に中東からベラルーシ経由で欧州連合(EU)に入ろうとしてポーランド国境に押し寄せ、ポーランド部隊などと衝突を重ねている。
大統領府でローゼンバーグ記者のインタビューに応じたルカシェンコ大統領は、「我々はスラヴだ。我々には心がある。この国の部隊は、移民がドイツを目指しているのを知っている」と述べた。
「誰かが助けたのかもしれない。この件を私が自分で調べるつもりなどない」と、大統領は付け足した。
EUと北大西洋条約機構(NATO)とアメリカは、ベラルーシからポーランドへ越境すれば簡単にEUに入れると甘言で移民を誘い込んだと、ベラルーシを批判している。ベラルーシはこれを否定している。
「私はEUにこう言った。移民を国境で拘束するつもりはないし、今後ますます押し寄せたとしても、我々は食い止めないと。というのも移民は私の国を目指しているわけじゃない。あなた方の国を目指しているのだから」と、ルカシェンコ氏は記者に答えた。
「しかし、私が移民を招いたわけではない。それに本音を言えば、移民にベラルーシを通過してもらいたくない」とも述べた。
大統領選での抗議と暴力については
ルカシェンコ氏は1994年に初当選して以来、大統領を6期続けている。昨年夏の大統領選で再選された際には、全国的な抗議デモが相次いだ。野党指導者たちは次々と国外に逃れたり、拘束され禁錮刑に処されたりしている。EUはルカシェンコ氏の再選を認めていない。
リトアニアに亡命した野党指導者スヴェトラーナ・ティハノフスカヤ氏のスタッフは、BBCによるルカシェンコ氏の単独取材を「独裁者に発言の場を与える」ものだと批判している。
インタビュー放送後にティハノフスカヤ氏は自らBBCに対して、「うそとプロパガンダのプラットホーム」をBBCがルカシェンコ氏に提供したと批判した。
記者は大統領に、大統領選前後の全国的な抗議で、平和的に抗議する大勢が拘束され、首都ミンスクの収容センターで暴行されたという指摘について質問。収容所から出た若者たちが受けた拷問による傷跡を見せる動画を、大統領に渡そうとした。
すると大統領は、「わかった、わかった。認める、認めるよ」と答え、「オクレスティナ収容センターでは複数が殴打された」と述べた。
その上で、「しかし当時、警察も殴るけるされたのに、あなた方はそれを映さなかった」と付け足した。
記者はさらに、ベラルーシでは今年7月以降、270の非政府組織(NGO)が活動停止に追い込まれるなど、市民社会の様々な仕組みが破壊され続けていると指摘した。
すると大統領は、「おまえたち西側が資金援助してきた、ごみみたいな連中は全員、虐殺してやる」と強い調子で答えた。さらに、「おたくらのNGOとかそっちが資金援助してきた何もかも、あんたたちの仕組みを我々が全部ぶち壊したから困っているようだが」と続けた。
西側の制裁と移民危機の関連は
EUは、ルカシェンコ政権による野党勢力や市民団体の弾圧を批判し、制裁を科してきた。さらに、ルカシェンコ政権はそうしたEUへの報復として、ポーランド国境で移民危機を意図的に画策しているのだと非難し、制裁を拡大している。
野党指導者ティハノフスカヤ氏は、ルカシェンコ氏は「権力しか理解しない。それ以外の言葉を理解しない」ため、EUやアメリカによる制裁には強力な影響力があると指摘。ルカシェンコ政権は、欧州各国がベラルーシの民主化勢力を支持したことに反発し、移民を利用して欧州を脅しているのだと、ティハノフスカヤ氏は見ている。
EUはすでにルカシェンコ氏が移民問題について、「人道にもとる、まるでギャングのような姿勢」で臨んでいると批判している。
ベラルーシのポーランド国境に集まっていた移民約2000人は18日、近くの倉庫に移動させられた。同日には数百人がイラク北部のクルド人居住地域に送還されたが、現在も約5000人がベラルーシ領内に残っているとされる。
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